不眠により日中の眠気や集中力の低下などの精神運動機能の障害に至る場合には治療を開始します。
睡眠薬は、ベンゾジアゼピン系、非ベンゾジアゼピン系、メラトニン受容体作動薬、オレキシン受容体拮抗薬、その他に分類されます。
①ベンゾジアゼピン系
昔から使用され処方数が多い睡眠薬です。
ベンゾジアゼピン系とは、化学構造の骨格に「ベンゾジアゼピン骨格」を持つものをいい、作用としては、脳内でGABA(ギャバ)の働きを強くすることで抑制の神経活動を活発にして眠気を出させます。GABAとは、サプリメントやチョコレートなどにも配合され、ストレス軽減や睡眠を促すと言われ販売されています。なぜこのような働きがあるかというと、GABAが抑制神経に働くためです。
ベンゾジアゼピン系は抗不安薬にも使用されますが、不安に対して効果が強いものを抗不安薬、催眠効果が強いものを睡眠薬と呼んでいるだけで、作用の仕方などは同じです。
抗不安薬同様に、ふらつきや転倒、依存や耐性には注意が必要です。
以下に作用時間ごとに各薬剤をまとめます。ただ、どのベンゾジアゼピン系睡眠薬もおおむね服用後10~30分で催眠効果が訪れ、1時間前後で体の濃度はMAXになりますので、実は薬剤間の違いは乏しいともいわれています。
<超短時間型>
速やかに効き、速やかに体からなくなる特徴があります。効果を実感しやすいですが、依存や耐性には注意が必要です。入眠困難の方に使用されます。
・トリアゾラム(ハルシオン)
<短時間型>
こちらも入眠困難の方に使用されます。
・エチゾラム(デパス)
・リルマザホン(リスミー)
・ブロチゾラム(レンドルミン)
・ロルメタゼパム(エバミール、ロラメット)
<中間型>
夜中に何度も目が覚める中途覚醒のある方、早朝に目が覚める早朝覚醒の方に使用されます。
・エスタゾラム(ユーロジン)
・フルニトラゼパム(サイレース)
・ニトラゼパム(ベンザリン、ネルボン)
<長時間型>
・クアゼパム(ドラール)
②非ベンゾジアゼピン系
2000年代以降にベンゾジアゼピン系構造を持たない「非ベンゾジアゼピン系」睡眠薬が登場しました。ベンゾジアゼピン系に比べて、筋弛緩作用が弱くふらつきが起きにくいと言われています。また、依存や耐性のリスクも少ないと言われていますが、作用の仕方はベンゾジアゼピン系と同じため、同様に注意は必要です。
作用時間は、すべて短時間型になります。
・ゾルピデム(マイスリー)
・ゾピクロン(アモバン)
・エスゾピクロン(ルネスタ)
③メラトニン受容体作動薬
体内時計(概日リズム)にかかわるホルモンである「メラトニン」の作用する部位に働くことで効果を発揮します。体内時計が整うまでには、約2週間かかるともいわれているため効果を実感できないからといって、すぐに服用を中止しないよう注意してください。またベンゾジアゼピン系と効き方のメカニズムが違うため、依存や耐性が起こりにくく安全性が高い薬といえます。
うつ病治療薬のフルボキサミン(先発名;デプロメール、ルボックス)と併用すると、本剤の効果が強く出すぎる場合があるため、併用禁忌(一緒に飲むことは不可)となっています。
・ラメルテオン(ロゼレム)
・メラトニン(メラトベル)
④オレキシン受容体拮抗薬
ベンゾジアゼピン系などは、抑制の神経活動(眠る神経)を活発にして眠気を出させますが、この睡眠薬は「オレキシン」という覚醒神経に関わるホルモンをブロックすることで眠気を誘うため、「オレキシン受容体拮抗薬」というカテゴリーに分類されています。
つまり、ベンゾジアゼピン系とは反対に、覚醒神経(起きる神経)を抑えることで眠気を誘うため、自然に近い睡眠を得ることができると言われています。そのため、安全性が高く依存や耐性が少ないと言われています。
・スボレキサント(ベルソムラ)
・レンボレキサント(デエビゴ)
⑤その他
ベンゾジアゼピン系などは依存や耐性に注意が必要なため、昔から鎮静効果のある薬剤は睡眠剤代わりとして用いられてきました。
・クエチアピン(セロクエル)
・クロルプロマジン(コントミン)
・トラゾドン(レスリン)
・ヒドロキシジンパモ(アタラックス-P)
・プロメタジン(ヒベルナ、ピレチア)
・レボメプロマジン(レボトミン、ヒルナミン)