統合失調症とは、10代後半~30台前半に好発し脳の機能の調整がうまくいかなくなり、幻聴や妄想、意欲低下などの生活のしづらさなどが現れる病気のことをいいます。
<症状>
統合失調症の主な症状は下記の3つのタイプに分かれます。
①陽性症状:急性期や再発・再燃時に起こりやすい症状で、幻聴、幻覚、妄想など本来あるはずのないものが現れる症状をいいます。
②陰性症状:陽性症状とは逆に意欲の低下や無気力、自閉などが現れる症状をいいます。うつ病でみられる興味・関心の薄れ、喜びの喪失と見分けるのは難しいですが、統合失調症の患者さんはこの状態をあまり苦痛であると感じないといわれます。
③認知機能障害:記憶力、判断力、集中力、理解力などが低下し知的能力の障害が起こります。普段何気なくできていることや無意識に判断していることができなくなり、日常生活や社会活動に様々な支障をきたします。
<原因>
統合失調症の発生機序はいまだに分かっていませんが、最も広く知られているのが「ドパミン仮説」です。ドパミンは快楽や多幸感、意欲などに関わる脳内ホルモンですが、このドパミンの作用が過剰となり興奮作用が現れ陽性症状のような幻聴や幻覚がでると考えられています。
逆に脳の別の部分では、ドパミンの量が減ることで陰性症状のような意欲低下や認知機能障害が起こると考えられています。ただ直接ドパミンの量を増やすことができないため、あえてセロトニンというホルモンをブロックすることでドパミンを増やすようにします。詳細は省きますが、ここの脳の領域ではドパミンとセロトニンが拮抗しています。
<薬の効き方>
つまり、統合失調症の治療には以下の作用をする薬が用いられます。
『陽性症状→ドパミンをブロック』
『陰性症状、認知機能障害→セロトニンをブロック』
<治療薬>
治療薬は大きく2種類に分類されます。1952年に世界で初めて開発された薬であるクロルプロマジン~1980年代にかけて開発された古い薬のことを第一世代抗精神病薬(定型抗精神病薬ともいいます)と呼び、1990年以降の薬を第二世代抗精神病薬(非定型抗精神病薬ともいいます)と呼んでいます。
①第一世代抗精神病薬(定型抗精神病薬)
ドパミンをブロックするという的を絞って作用する特徴があります。そのため、陽性症状に対して強い効果を発揮する反面、ドパミンをブロックすることで錐体外路症状という副作用も引き起こしてしまいます。つまり、イメージとして効果は強いが副作用も強いという薬剤になります。そのため、現在では後述する第二世代抗精神病薬を第一選択として用います。(ただし、第一世代の中でも特徴が異なります。詳しくは、各薬剤をお調べください。)
・クロルプロマジン(コントミン)
・レボメプロマジン(レボトミン、ヒルナミン)
・ハロペリドール(セレネース)
・スルピリド(ドグマチール)
②第二世代抗精神病薬(非定型抗精神病薬)
ドパミンをブロックする以外にセロトニンもブロックする特徴があります。そのため、陽性症状以外に陰性症状にも効果を示します。また第一世代に比べて錐体外路症状が少ないという特徴もあります。ただ、体重増加や血糖値の上昇など第一世代ではあまりみられない副作用がでる薬剤もあります。(第二世代の中でも特徴が異なりますので、詳しくは各薬剤をお調べください。)
「セロトニン・ドパミン遮断薬(SDA)」
セロトニンとドパミン両方をブロックする薬をいいます。
・リスペリドン(リスパダール)
・パリペリドン(インヴェガ)
・ブロナンセリン(ロナセン)
・ペロスピロン(ルーラン)
・ルラシドン(ラツーダ)
「多元受容体作用抗精神病薬(MARTA)」
マルタとも呼ばれ、上記のSDAとしての作用以外に色々なホルモンに作用し、統合失調症以外に双極性障害や鎮静効果があるため睡眠剤代わりに使用されたりと多岐にわたる作用を発揮する薬剤です。
・オランザピン(ジプレキサ)
・クエチアピン(セロクエル)
・アセナピン(シクレスト舌下錠)
・クロザリル
「ドパミン部分作動薬(DPA)」
今までの薬剤は、ドパミンをブロックすることで作用を発揮していましたが、その反面錐体外路症状という副作用にもつながっていました。
そこで、ドパミンを完全にブロックするのではなく、ブロックもするが少し活性化もする作用も併せ持つ薬剤が開発されました。それがDPAと呼ばれる薬剤となります。
ドパミンを完全にはブロックしないため、副作用である錐体外路症状が出にくく、またドパミンが少ないため起こる陰性症状にはドパミンを活性化することで効果を発揮します。
つまり、陽性症状や陰性症状それぞれにオールマイティに作用し、副作用も少ないというメリットがある薬剤です。
・アリピプラゾール(エビリファイ)
・ブレクスピプラゾール(レキサルティ)
「その他」
・ゾテピン(ロドピン)
<副作用>
問題となりやすい副作用について列記します。
脳内では、ドパミンとアセチルコリンという神経伝達物質が拮抗しています。ドパミンをブロックすることで、相対的にアセチルコリンが活性化されて錐体外路症状が引き起こされると考えられています。そのため、治療薬にはアセチルコリンをブロックするビペリデンやトリヘキシフェニジルが使用される場合があります。
・高プロラクチン血症
プロラクチンとは脳内から分泌されるホルモンで、乳汁分泌作用などがあります。基本は妊娠や授乳期に多く分泌されますが、統合失調症治療薬などにより過剰に分泌されると、妊娠してないにも関わらず乳汁の漏出や女性化乳房、性機能障害が現れてしまいます。自覚症状としては、女性では生理不順などで現れる場合が多く、男性では勃起不全や性欲減少などが多いです。また、長期的には骨密度の低下や乳がんのリスク増加にもつながると考えられています。
こちらの原因もドパミンをブロックすることで起こります。脳内では、ドパミンとプロラクチンは拮抗しており、ドパミンがブロックされることで相対的にプロラクチンが活性化されて起こります。
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