錐体外路症状とは、神経経路の1つである錐体外路の障害によりスムーズに体が動かせなくなることをいいます。そのため、体の動作異常が症状として現れます。
錐体外路症状にはパーキンソン病などの病気も含まれますが、統合失調症治療薬やうつ病治療薬など様々な薬によって起こる副作用でもあります。
副作用による錐体外路症状には、「薬剤性パーキンソニズム」、「ジスキネジア」、「アカシジア」、「ジストニア」などがあります。
お薬ナビで説明している錐体外路症状は、これらの症状の総称として表現しています。
今回は、これらの症状について詳しく解説していきます。
<薬剤性パーキンソニズム>
薬の副作用によりパーキンソン病と似た症状(パーキンソニズムといいます)を起こすことをいいます。症状としては、筋固縮、無動、振戦などがあります。
①筋固縮;筋肉が固くなりこわばる
②無動;動き出すのに時間がかかり、ゆっくりとしか動けない
③振戦;安静時に手足が震える
治療としては、第一に原因薬物の中止や減量が基本となりますが、それらが困難な場合にはビペリデン(先発名;アキネトン)やトリヘキシフェニジル(先発名;アーテン)などが検討されます。
<ジスキネジア>
顔面や手足が勝手に動いてしまい自分では止められない、または止めてもすぐに出現するなどのおかしな動きの総称をいいます。
このジスキネジアには、「遅発性ジスキネジア」、「アカシジア」、「ジストニア」などが含まれます。
①遅発性ジスキネジア
・統合失調症治療薬等の長期服用によって発症するジスキネジアのことをいいます。主症状として、繰り返し唇をすぼめる、舌を左右に動かす、口をもぐもぐさせるなどがあります。
・進行すると治らなくなる可能性もあるため、予防が最重要となります。
・治療としては、第一に原因薬物の中止や減量が基本となります。また、これまで遅発性ジスキネジアを適応とする薬剤は存在しませんでしたが、2022年にはじめてバルベナジン(先発名;ジスバル)が発売されました。
ちなみに、パーキンソン病治療薬(特にレボドパ製剤)投与中にもジスキネジアが発症することがあります。その際の症状としては、後述するアカシジアやジストニアなどが出現することが特徴です。
②アカシジア
・静坐不能症とも呼ばれ、じっとしてられない、足がムズムズするなどの身体を動かしたい衝動に駆られる状態をいいます。また、アカシジアに伴って焦燥、不安、不眠などの精神症状が出ることもあります。そのため、統合失調症の悪化による精神症状と間違えやすいため注意が必要です。
・歩行や運動によって軽減されることが特徴です。
・治療としては、第一に原因薬物の中止や減量が基本となりますが、それらが困難な場合にはクロナゼパム(先発名;ランドセン)やアロチノロール、プロメタジン(先発名;ヒベルナやピレチア)を保険適応外で処方される場合があります。
③ジストニア
・自分の意思通りに筋肉が動かなくなり、異常な動作や姿勢になる状態をいいます。例えば、顔・頭・首などの体の一部がさまざまな方向にねじれる、口が開閉できない、体全体が歪んでしまうなどがあります。知能が侵されることはありませんが、自分の本意とは全く異なった動きが出てしまうことから本人にとっては非常に不快なものといえます。
・治療としては、第一に原因薬物の中止や減量が基本となりますが、それらが困難な場合にはビペリデン(先発名;アキネトン)やトリヘキシフェニジル(先発名;アーテン)などが検討されます。